http://ningenshikkaku-movie.com/
監督:蜷川実花
WOWOWにて視聴。元々友達が、映画がロードショーされていた頃に熱く語っていたので、見たいと思っていた。しかし、太宰治がどんな人物だったのか、人間失格についても名前だけで、何も知らなかった。
ですやん的あらすじ
太宰(小栗旬)は妻の美智子(宮沢りえ)と二人の子供と暮らしているにも関わらず、毎晩の様に作家仲間達と飲んだくれていた。彼はお酒だけでなく、色恋にも手を染めていた。
彼は、作家志望の静子(沢尻エリカ)の文才に惹かれ、彼女と密会を重ねる様になった。同じ頃、お酒の席で出会った、夫の帰還を待つ富栄(二階堂ふみ)にも興味を持つ様になる。
感想
太宰治が書いた、「人間失格」、「ヴィヨンの妻」、「斜陽」を読んでいた方がよく理解できるし面白い。読んでいないと、いつもの蜷川実花の色鮮やかな世界に圧倒され話があんまり入ってこない。(私だけかもしれないが)
特に、「斜陽」は静子の日記を参考にして書いていると言われていて、静子の台詞の中には「斜陽」の中の言葉がよく出てくる。
なので映画の感想の前に先ずは三つの本について書く。
斜陽のあらすじ
破滅への衝動を持ちながらも“恋と革命のため”生きようとするかず子、麻薬中毒で破滅してゆく直治、最後の貴婦人である母、戦後に生きる己れ自身を戯画化した流行作家上原。没落貴族の家庭を舞台に、真の革命のためにはもっと美しい滅亡が必要なのだという悲壮な心情を、四人四様の滅びの姿のうちに描く。昭和22年に発表され、“斜陽族”という言葉を生んだ太宰文学の代表作。
気になって、読んでみた。その前に人間失格を読んだのだが、まるで文体が違っていた。確かに女性が書いた様な話だった。凄くかしこまったお上品な言い方から始まりすぐに好感を持った。
恵まれた生活から一転し、山荘で母と暮らす様になったカズ子。母は体調を崩してしまい、何とか支えようとなれない畑仕事をし、懸命に尽くすも、戦場に出て消息不明になった弟の直治を思う母。それを見るカズ子が凄く哀れだった。
直治は貴族を捨て庶民になりたがったが、半狂乱にならないと庶民になれない為、酒を飲み麻薬をやった。直治は太宰治本人を織り交ぜた様な人物だった。彼の小説が少し出てくるが凄く乱雑でいかつくて半分何て書いてるかわからなかった。
直治もカズ子もひめごとを抱えていて、自分達の中でそれはどんどんと大きくなっていって、生きる希望となりまた自らを苦しめる様にもなってくる。ただそこで、カズ子と直治が同じ方向に進まなかったのは性別の問題か環境か、生き方か色々と思い巡らせて面白い。
人間失格の概要
他人の前では面白おかしくおどけてみせるばかりで、本当の自分を誰にもさらけ出すことのできない男の人生(幼少期から青年期まで)をその男の視点で描く。
(Wikipediaより)
人間失格を読んだ後は何日かぐるぐるぐると考えていた。人間失格の主人公の葉蔵は人間恐怖に取り憑かれていて、人間に対する最後の求愛としてお道化になる事を選んだ。葉蔵の気持ち全てを理解することはできないが少しだけなら分かる。
お道化になった男が、だんだんと人間や社会や女を知っていく。だが、断ることが怖い葉蔵はどんどんと重い荷物を背負ってしまう。破滅しそうになった時、何か試行錯誤するでもなく唐突に「死ぬことにしました」という言葉がくるのが不謹慎だが面白かった。太宰治の文章はいつも唐突で急展開がやって来る。ので全く飽きさせない。
それにしても、端正な顔立ちと女が喜ぶ様な事を知っていると、ずーっと女がいろめきだってしまう。それもそれで大変そうだ。。
ヴィヨンの妻 あらすじ
作者を髣髴させる、元男爵の次男だという帝大出の詩人の妻「さっちゃん」の視点で、大谷と彼を取り巻く人々の言動が綴られている。さっちゃんは、浅草公園の瓢箪池畔でおでんの屋台を出していた父とふたりで長屋に住んでいた。小金井の家はボロ家で、3人家族の家計は、しばしば熱を出す子供を医者に連れて行きたくても、お金もない有様。その上、大谷は数日も帰ってこないこともしばしば。ある時、大谷は入り浸っている中野駅の小料理屋「椿屋」から運転資金を盗み、やってきた経営者夫婦に大谷は辻褄のあわない言い訳を並べたてる。
(Wikipediaより引用)
3作品の中で1番ウキウキして読めた。殆ど暗い気持ちにならない作品だった。
だがどうしてもさっちゃんみたいな人がこの世の中にいるのかと想像してしまった。大谷に会いたくて椿屋で働くさっちゃんが健気で可愛い。できればもっといい人と結婚して欲しかったと凄く感情移入してしまった。
このさっちゃんも、ある出来事を通して色んな意味で変わっていく。大谷に向けた最後の言葉はグッとくるものがあった。気軽に読める作品なので是非。
映画の感想
3つの小説を読んだ後でもう一度見ると1回目みた時より面白かったが、どうしても太宰が好きになれなかった。人間失格の主人公は好きだったんだけど。
どうしても太宰がただの色男に思えてしまった。 3人の女の絡みが大半を占めていて、彼の苦悩があんまり描かれてなかったからかもしれない。
その中で、妻の美智子は太宰の毎晩の様にお酒を飲んだり女と会っているのが分かりつつも、彼の文才を信じ、太宰を送る姿などは自分の中で表しにくい感情を憶えた。
また、この作品の中には坂口安吾や三島由紀夫も出てくるが、私は余り詳しくないので知ってから見ると、より物語を細部まで楽しめるかもしれない。
最後に
テーマとしては凄く面白かったが、作品自体は自分の年齢や読解力の無さから、あ自分には合ってないなと思った。ただ、この作品を見たことで太宰治に興味を持ち、色んな作品を読めたことは凄く見て損は無かったと思う。
もしかしたらもっと太宰治の本を読んだり、他の文豪の本を読めば、理解度も上がったかもしれないので、また何年か後に映画を見てみたいと思う。